当財団は歯科医学分野の口腔衛生学および小児歯科学などへの助成を行ない、もって口腔保健・医療の向上に寄与することを目的に1971 年に設立されました。以来、50年超に亘り若手研究者の支援のため累積で1,477件総額4億3千万円余の研究助成を行う事が出来ました。
その間、歯科医学関係者のたゆまぬ努力により、国内の歯学研究は大きく進展しました。その結果、国民はより高いレベルの歯科医療を享受し、さらにはエビデンスを伴う様々な情報発信をもって自らの健康に対する意識向上を促す事に繋げ、国民の口腔環境は大いに改善しました。
一方、医療の発達によって、人間の寿命は急速に延伸する事が出来ました。その半面、生活習慣病、認知症、運動機能障害などが原因で、介護状態で人生を終わる人が増えています。他人の手を煩わせることなく、人間の尊厳を保ったまま、自分の意志で「活きる」ことが出来ないだろうか? 近年、「生きるから活きる医療へ」の取組が始まっています。このような中、歯科医療、歯学研究への期待がますます高まっています。若手歯学研究者は、この期待に応え、「活きる医療」を社会実装していく役割を担っているものと考えています。
歯科医学を学ぶ若者が歯学研究者を目指す理由は様々であると思いますが、当該分野の先達の経験を知ることは、研究者としての方向を探るうえで大いに役に立つのではないでしょうか。
当財団は2021 年に設立50 周年を迎えましたが、これを機会に歯科医学の研究に従事し、それぞれの分野をリードしている先生方に「次世代を担う若手研究者に対するエール」として先達からのメッセージを寄稿していただきました。置かれている研究環境はそれぞれ異なるかもしれませんが、
歯科医学を追求して人類に貢献したいという熱い思いは相通じるものがあると思います。これらのメッセージに共感していただければ幸いです。
また、この50年間で研究助成に採択された口腔衛生学分野と小児歯科学分野の研究テーマについて、その変遷を分析致しました。社会のニーズの多様化、複雑化に伴い歯科医学分野においても学際化が進んでいると思いますが、今後の歯学研究のご参考になれば幸いです。 |